屈強に生きる

毎日ハッピー

人生経験としてホストクラブに行ってきた話

卒業を間近に控えた大学4年の冬。

女子大生としてやり残したことがあまりにも多すぎる、と妙な焦燥を感じていた。大学入学を機に上京した4年前のあの頃は「なんでも見てやろう。なんでも経験してやろう。」と思っていた。しかし私にはただ4年間真面目に大学に通ったという事実、それだけしかしなかった。
そんなとき、友達の「人生最後だと思って、ホストクラブに行かない?」という誘いに乗らない手は無かった。

しかし、ただホストクラブに行くのは怖い。料金設定もわからないし、そもそもホストクラブってどこにあるの?雑居ビル?
夜のエンターテイメントに関してド素人である私たちだが、就活で観光業界を視野に入れていた友達の提案で、かの有名な はとバスが主催する「はとバスホストツアー」なるものに参加することにした。

はとバス ホストツアー】
はとバスホストツアーの概要は以下の通り。

東京駅ではとバスに乗車→九段下で下車しホテルでのビュッフェスタイルのディナー →再びバスに乗車すると添乗員がホスト数名に。ホスト数名からホストクラブの説明を受けつつ、新宿歌舞伎町のホストクラブへ移動→すげぇ!本物のホストクラブだ!

はとバスホストツアーの利点は料金が明瞭なことである。前払いで9800円なので、(別料金でシャンパンをあけたりなどのオプションをつけない限り)料金設定がわからずお会計がオンギャ!!となることがない。
はとバスという絶対的信頼感の持てるツアーなので安心してホストクラブを楽しむことができるのである。

【初めてのホストクラブ】
高校は女子校だった。大学も女子大だ。バイト先も女の人しかいない。
異性と仲良く話した経験を数値化するなら、普通の女子大生を100とすると、私はせいぜい3くらいなものである。ましてやイケメンと楽しく会話した経験など皆無である。地味でブスという自己認識の私は、イケメンが地味なブスに厳しいというこの世の摂理を思い出し、妙に緊張した。
手汗をコートのファーに染み込ませつつ入店。普段なら絶対足を踏み入れないような雑居ビルにそのお店はあった。

ホストクラブは思っていたままの世界だった。黒い壁面暗い照明 なのになぜかキラキラしてる。お出迎え役的なホストがコートを預かってくれ、荷物を持ってエスコートしてくれる。
席に着くとホスト総勢30名くらいのシャンパンコールが始まった。
シャンパンコールの存在は知ってはいたものの、実際目にすると圧巻であった。キラキラの照明、ズンズン流れる音楽に合わせてホストが歌って踊るエンターテイメントだった。事前に配られていたハンカチ(はとバスコラボデザイン)を周囲の参加者がぐるぐる振り回す。遅れをとりつつ私も右手でハンカチを振り回し左手で写メを撮りまくった。
(ホスト許可済み SNSにあげて良いそうなのであげます 改めて凄い世界だ)

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ホストクラブを楽しむためには平常心とか理性のようなものを捨てる必要があるようだ。楽しい時間を過ごすには恥ずかしがったりするだけ無駄だと悟った。

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席にはホストが代わる代わるやってくる仕組みであった。 
ホストにも色々なキャラがいて、典型的なイメージの髪の毛が金髪で噴水みたいになってるウェイウェイ系ホストから、髪型も服装もホスト臭くない真面目に見えるお顔の綺麗なお兄さんまで、さまざまである。(実際に目にして改めて感じたが、テンションの高いホストの方が顔がカッコよくない  落ち着いてる人の方がイケメン率が高かった)

【文学好きホスト】
1人、見るからにホストクラブに馴染んでいない好青年風のお兄さんがいた。
身長が高く、すらっとしている。髪型もホストのそれではない。街中にいたら二度見してしまいそうなイケメンのお兄さんである。話し方も穏やかだ。なぜこんな根っこから善良そうなお兄さんがホストに?と疑問に思いホストになった理由を聞いてみると、
「ホストになった理由?なんやと思う?女が好きだからとか、酒が好きだからとか、金が欲しいからだと思うやろ?俺は違うんよ。前は◯◯(地名 西の方)で書店員をしていたんやけど、彼女に振られて、何もかも変えたくなって2ヶ月前に上京してホストになったんよ」
という重すぎる答えが返ってきて心の底から心配してしまった。(今思うとこれがこのお兄さんのやり方で、この時点で私はお兄さんの術中にハマっていたのかもしれない)
私が日本文学科だと話すと、お兄さんは「俺 太宰治の「斜陽」が好き」
と返してきて、あまりにも想定外で思わず笑ってしまった。新宿歌舞伎町のホストクラブで太宰治の「斜陽」を語るイケメンの話に耳を傾ける経験など、この先二度と無いだろう。「一番好きな本はなんですか?」と聞いたところ「一番決めるのは難しいなあ〜。ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」かなあ」と返ってきて楽しくなってしまった。

髪の毛噴水ウェイウェイ系ホストには微塵も感情を揺さぶられなかったが、失意のもとホストになった文学好きイケメンお兄さんは存在が反則である。今回ははとバスのツアーで行ったから良かったものの、個人で行っていたらお兄さんのために一晩で貯金を使い果たしていたかもしれない。改めてはとバスに感謝である。

【総括】
非日常を経験できてとっっっても楽しかったです。
しかし想定外の存在である文学好きイケメンホストに心揺さぶられ危うく人生を踏み外しかけたのでもう二度と行きません。
文学好きイケメンホストから「まなみさんの好きな本を教えてください♪」と営業LINEが来たので適当にフランス書院の本の名前でも送ろうと思います。

私がお兄さんに会うためもう一度ホストクラブに行こうとしてたら本気で止めてください。
さよならだけが人生だ。


【追記】
後日、文学好きイケメンホストから以下のようなLINEが来ました。ホストごめん!私は薄給!!!いつか石油を掘り当てたらまた行くからね!!!f:id:horyuji_yumedono:20170730195058j:plain

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